こんにちは、税理士の小野尾です。
今回は【松下幸之助に学ぶ経営哲学】の第11回目です。
私はドラッガーからではなく、日本人である松下幸之助から経営哲学を学んでいます。その想いはこちらに綴っています。
ピーター・ドラッガーより松下幸之助【松下幸之助に学ぶ経営哲学】
今回はダム経営という考え方をご紹介します。
経営者であれば誰もが、会社を安定的に経営していきたいと考えるものだと思います。
そのための大切な考え方として「ダム経営」という考え方があると、松下幸之助は言っています。
ダムというのはご存知の通りのダムのことです。河川をせき止めて水を蓄えることで、季節や天候に左右されることなく、下流に一定流量を保つことができます。
ダムのようなものを会社にも持っておくことで、会社内外の環境変化にも柔軟に対応することができ、安定的な経営につながります。
会社に持っておくべきダムというのは、要するに人員や在庫、資金などに余裕を持っておくということです。
人員であれば、例えば10人の社員がフル稼働しなければ利益が出ないというのではなく、例えば80%なり90%なりの稼働で利益が出ておくようにしておくことです。
そうすれば、需要が急に増えても人員に余裕があるから十分に対応ができますし、トラブルが生じたとしても、ゆとりを持って対応ができます。
資金であれば、新規事業に1,000万円の資金が必要だったとしても、1,000万円超度を準備しておくのではなく、100万円なり200万円なりの資金を準備しておくことです。そうすれば、計画通りに事業が進まなくても、対応することができます。
しかし、気を付けなければいけないのは、ダム経営だと言っても人員や在庫などを過度に抱える過剰人員や過剰在庫などに陥ってはいけないということです。
単なる過剰人員や過剰在庫は”ダム”ではなく単なる”無駄(ムダ)”です。
会社の利益を圧迫することになり、かえって安定的な経営を邪魔することになります。
”ダム”の”ダ”と”ム”を入れ替えると”ムダ”になります。まさにダムとムダは正反対です。
しかし、どこまでがダムでどこからが無駄かの線引きは難しいものです。
ダム経営に必要な人員が何人か、在庫は何個か、資金はいくらかを具体的に決めることは難しいです。
大切なのはダム経営をしようとする心の余裕が経営者には必要だということです。
松下幸之助はこのことを心のダム、あるいはダム意識と言っています。
こういう意識を持って経営をしていけば、その会社の実態に応じたダムの大きさを考えることができ、結果的にダム経営を行うことができるということです。
つい効率を重視して無駄を排除してしまいがちですが、無駄にならない程度の余裕はダムとして必要だと、考える心の余裕は必要ですね。
最後に私が教科書にしている本をご紹介します。
実践経営哲学 (PHP文庫)